南フランスの海沿いに位置する地域にはエクス=アン=プロヴァンス(Aix-en-Provence)やマルセイユ(Marseille)、アルル(Arles)などがあり、代表的なこれらの地名はみなさんも聞いたことがあるかと多いかと思います。
これらのある場所がプロヴァンス(Provance)地方と呼ばれています。
海や渓谷などの風景はもちろん、歴史も古いこの地域ではたくさんの遺跡や建造物も見られます。
また地域的にもハーブやオリーブ、ラベンダーなどの栽培なども盛んで、海が近いため魚介類も豊富で、マルセイユ料理の『ブイヤベース』なども有名です。あらゆるところで自然を多く感じられるのが魅力の地域でもあります。
街には白い塗り壁の他にオレンジやハニー色の塗り壁やカラフルな窓飾り戸のついたかわいい建物たちが並びます。
地中海気候を感じられるような燦々と降り注ぐ太陽の光と、そこに照らされている美しい街並みはまるで絵画のような世界!
しかし、実はこの地域は地中海気候独特の気候があり、その街並みを生み出す建物の美しさの背景には、その気候を乗り越えなくてはならない、考えられたデザインがあるのです。
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窓のデザイン
連続して並んでいる小さな窓が特徴的な建物が連なっている街並みを写真や映像で目にしたことがあるかと思います。
そこにはカラフルな木製の飾り戸がついている窓やオーニングが付いている窓などがあり、それは強い日差しを遮るためであったり、ミストラルから守るためであるなどの機能的な役割を持ちながらも外観のおしゃれなデザインの一部となっていて、見事に風景に溶け込んでいます。
プロヴァンス地方は地中海性気候の影響を受けやすい地域で、夏は日差しも強く乾燥し、気温は30℃くらいほど上がります。冬は低い時では0℃近くまで下がるというように年間を通すと寒暖差もあり、その上、ミストラルという暴風が年中吹き付けるという独特な気候の地域になります。
窓が小さいのはその夏の光を取り入れながら、日差しから室内の装飾品などを守るためやミストラルの影響を受けないようにする工夫とされています。
建物の配置
プロヴァンス地方ではミストラルという乾いた北西の強い暴風が年中発生します。時には数日間吹くこともあり、その風速50キロから100キロ近いと言われています。
そのため、家の造りや向きなども考えられたものになっています。ミストラルの風の影響がある面に窓やドアが来ないようファサードの位置も工夫するのだそう。
その考えられた配置で建てられた家が並ぶ風景はとても美しい絵画のよう。
デザインの中にも地中海気候独特の影響も考えられた建築になっているのでした。
ロートアイアンとテラコッタ
ヨーロッパでの素材で代表的なものにロートアイアンやテラコッタがあります。
製鉄の技術はエジプトでは紀元前からあったとの説もあるほど、その歴史は長く、ヨーロッパでは古くからの建築でも使用されてきました。
アールヌーボーやゴシックなど様々に変化する建築様式の文化の中でも門やベランダなどにいつもロートアイアンが取り入れられています。
フランスのこの地域でも外壁に付いている照明ブラケットや窓辺で植物を飾れるフラワーボックスなどロートアイアンが使われている箇所がたくさんあります。
その加工技術の伝統は今もヨーロッパの各地域で幅広く受け継がれているのです。
またテラコッタも南ヨーロッパの地域では多く普及しています。
テラコッタとは粘土を素焼きにしたもので古代ギリシャより以前から作られていたと言われており、壺や皿、住宅の屋根などにも使われています。
その素材感は太陽の日差しが眩しく感じられるプロヴァンス地方の風景に溶け込み、その文化を感じられるのです。
塗り壁や石造りの外壁
プロヴァンスの建物の外壁はホワイトの他にもオレンジ、ハチミツ色の塗り壁や大きな石が積まれた壁が印象的です。
南ヨーロッパでは漆喰文化の歴史もあり、塗り壁に使われている住宅が多くあります。
プロヴァンスは自然あふれる地域、そんな豊かな自然から発見された天然素材でもある漆喰やプラスター(石膏)、岩石、土などを外壁材として使用されており、漆喰は耐久性も高い素材で、温度や湿度などを一定に保つ効果もあります。
その外壁材は機能だけではなく、その風景の一部として、空の青さや自然のグリーンの中に映えるアンティークなハチミツ色の外壁が南フランスの特徴とも言えるほど、その美しさを感じさせてくれるものになっているのです。
まとめ
プロヴァンスの自然あふれる風景に溶け込む街並みは、その独特の気候風土からなる機能的な面を持ち合わせながらもデザインが美しく、建物と共に創り出された風景とそこに温かく照りつける太陽の光。それは本当に唯一無二の風景とも思えます。
それが人々を何度でも訪れたくなるような気持ちにさせるほど、誰もが魅了される理由にもなっているのです。
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